「高校時代の部活は和太鼓部でした」
小川 健一 (弁護士)
和太鼓と聞くと、お祭り、勇壮な響き、様々なことを連想すると思います。
高校時代の3年間、私は和太鼓部で青春を過ごしました。ちなみに、高校時代の部活で和太鼓部に所属していたという人に私はまだ出会ったことがありません。
おそらくマイノリティだと思います。しかし、和太鼓というのは、広い意味で「音楽」のひとつです。軽音楽部や吹奏楽部と同じジャンルといっても過言ではありません。そういう意味ではマジョリティと言えるでしょう。
和太鼓と他の音楽の大きな違いというのは、歌詞や音程がないことです。他の音楽と比べると表現の幅が少ないです。
ただ、表現の幅が少ないながらも、音の強弱であったり、リズムの変化であったり、演奏者の表情、体の使い方など様々な表現方法を駆使して演奏します。
また、軽音楽部が歌詞でメッセージを届けるように、「エイサッ!」「セイヤッ!」「ヨッ!」など和太鼓独特の掛け声で魂のメッセージを届けます。
魂を届けるのに歌詞などいらないのです。
演奏後に、聞き手から「感動した」「元気が出た」と言われると嬉しくなったことを思い出します。
先日、ラグビーワールドカップでニュージーランド代表(オールブラックス)の「ハカ」が話題になりました。
歌詞はよく分かりませんでしたが、彼らの踊る姿から、「圧倒的な力をもって相手を倒す」という王者の風格を感じました。聞き手に魂を届けるという意味では和太鼓に似たものを感じ、一方的にシンパシーを感じております。
そんな「表現者」の一人だった私は、現在では弁護士として日々仕事をしています。
弁護士というのは、様々な法律用語を駆使しながら主張を文章化し、裁判所や相手方にメッセージとして届けます。
高校時代、「エイサッ!」「セイヤッ!」「ヨッ!」という掛け声で聞き手にどうメッセージを届けるか試行錯誤していたのに比べると、現在はまるで真逆のことをしています。
法廷に和太鼓とバチを持ち込んで突然演奏し始めても相手に主張は届かないのです(おそらく退廷を命じられるでしょう)。
弁護士3年目になりますが、今後も、依頼者に分かりやすい説明をすること、読み手に伝わりやすい文章を書くことを意識し、弁護士としても「表現者」としても腕を磨いていきたいと思います。