犯罪被害者参加制度が始まりました

熊谷 靖夫 (弁護士)

 平成20年12月1日より「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律」等が施行され,刑事裁判に対する犯罪被害者参加制度がスタートしました。

 これまでの刑事訴訟の手続では,犯罪被害者は極めて限られた範囲内でしか参加が認められておりませんでした。しかし,新しく始まった犯罪被害者参加制度により,被害者や遺族に,裁判への出席・証人や被告人への質問・事実又は法律の適用についての意見陳述などが認められるようになりました。
 被害者参加が認められる裁判は,故意の犯罪行為により人を死傷させた罪・強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪・強姦罪・準強姦罪・業務上過失致死傷罪・重過失致死傷罪・自動車運転過失致死傷罪・逮捕罪・監禁罪・未成年略取及び誘拐罪・営利目的等略取及び誘拐罪・身代金目的略取等の罪・所在国外移送目的略取及び誘拐罪・人身売買罪・被略取者等所在国外移送罪・被略取者引渡し等の罪などの裁判です(刑事訴訟法316条の33)。なお,平成20年12月1日の時点ですでに裁判となっていた刑事裁判には適用がありませんのでご注意ください。

 被害者参加制度を利用したい場合には,まず,検察官に対して参加の申し出をしてください。そして,裁判所から参加について許可が出ると,被害者参加が可能となります。

 犯罪被害者参加制度によって刑事裁判に参加するにあたっては,弁護士に委託して支援してもらうことも可能です。経済的理由により自費で弁護士への依頼が困難な被害者参加人については,刑事裁判に参加する犯罪被害者等(被害者参加人)のための国選弁護制度も同時に始まりました。この制度の申込み窓口は法テラス(日本司法支援センター)となっています。

 そのほか,損害賠償命令制度も始まっています。これらの制度の活用が犯罪被害者救済の一助になればと思っております。