熟年中国旅行

高柳 馨 (弁護士)

 10月27日から10月30日まで,川崎市日中友好協会の旅行に参加し,蘇州,南京,上海に行ってきました。私はもうすぐ65歳ですが,今回の旅行では,私が最も若い参加者で,次に若い人が74歳,その他は全員76歳以上で,参加者は7名,全員,現役で仕事をしておられます。
 高齢化の今の日本を象徴するような旅行で,年齢的には私が皆さんのお世話をしてもおかしくなかったのですが,実際は,以下のとおり,私が熟年の皆さん(私も十分に熟年ですが、私より更に成熟度が高いという意味で熟年と呼ばせていただきます)のお世話になりました。

 まず,行きの羽田空港で,私のトランクの取手が引っ込まなくなり(古いトランクを持ってきたことを後悔しました),引っ張ったり押し込んだりしていたところ,何と取手が壊れてしまい,このままではトランクを預けられなくなると焦りました。そこで,最後の手段として取手を引きちぎろうとしたところ,参加者のお一人からアドバイスをいただき,そのとおりにやったところ取手はスーと引っ込んでくれ,事なきをえました。以後,取手には一切触れずに旅行を無事に終えました。

 そして,その翌日,荷物を全部持って,蘇州駅から南京行きの新幹線に乗りました。
 新幹線に乗るときにも,飛行機と同様,かなり厳重な持ち物及び身体検査があり(ズボンのベルトまで外すように指示されました),新幹線の切符だけではなく,パスポートの提示も求められました。
 中国の新幹線に乗るのは初めてで,乗るまでの手続も何もかも分かりません。ガイドさんは先に行ってしまっています。このようなとき,おもてなしの国である日本では係の人が親切に色々と教えてくれますが,中国ではそうはいきません。
 パスポートを探してもたもたしていたところ(大事な物ほどいざというときには見つかりません),若い係員から何をやっているのかと早口でまくしたてられて,ようやくパスポートを探し出して,切符をその上に乗せて,検査を終えて出てきたところ,何とパスポートの上にあった切符が見当たらなくなっていました。
 すぐに係員に聞こうと思いましたが,係員は忙しくしており,私のつたない中国語が通用しそうにありません。新幹線の発車時間は迫っており,切符がないと改札口を通れません。私は,切符を落としたものと思い,検査場の辺りを探し回りましたが,切符は落ちていません。新幹線の発車時刻は迫っており,このままでは新幹線には乗れなくなると,焦りました。
 そのとき,参加者のお一人から冷静にパスポートの中を調べるようにアドバイスされ,パスポートに挟まっている切符が見つかりました(係の人がそのようにして私に返してくれたようでした)。そして,慌てて改札口に入り,事なきをえました。

 というような具合にこの後も何度もトラブルに見舞われましたが,その都度,参加者の皆さんに助けていただいて,無事に旅行を終えました。熟年の皆さん方の智恵にはまだまだかなわないと思った次第です。ただ,皆さんはさすがにあまりお飲みにならないので,私1人,毎日の昼食及び夕食の際に出される紹興酒を十分に飲ませてもらい,日頃の仕事の疲れを癒やすことができました。