法教育について
種村 求 (弁護士)
横浜弁護士会内に設置されている委員会のうち,私が所属している委員会のひとつに,法教育委員会があります。法教育とは,「法律専門家でない一般の人々が,法や司法制度,これらの基礎になっている価値を理解し,法的なものの考え方を身につけるための教育」(法教育研究会報告書)と定義されるもので,①法や法律の基礎にある考え方を理解する「知識」,②法的な知識を使いこなす「技能」,③法的な理念に従って行動して具体的問題に対して主体的に関与しようとする「意欲」を養うことにより,理想的な市民の育成を目的とするものです。
このような「法教育」については,価値観の多様化,行政改革・規制緩和,さらには裁判員制度の導入といった社会的背景等から脚光を浴びるようになっています。
横浜弁護士会においては,法律の専門家としての立場から法教育を推進するべく,法教育センターを設置し,(1)出前授業(2)模擬裁判指導(3)裁判傍聴会を実施できる体勢を整えており,法教育の普及に取り組んでいます。(1)出前授業では,「カラオケボックス」が住宅街にできた場合の弊害を是正するためにどのようなルールをつくるべきかを生徒等参加者に議論してもらう,(2)模擬裁判では,深夜に電気倉庫に侵入した被告人に窃盗の意思があったかどうかについて評議してもらうなど,体験型授業をふんだんに取り入れていることもあって,参加者が主体的に参加し,活発な議論が展開されるのを目の当たりにすることができます。
毎回,何らかの新たな視点の提示を受けたり,素朴な量刑感覚に気付かされるなど,講師としても非常に勉強になる上,楽しく過ごすことができ,講師の側にとっても有意義です。私は最近,学校に派遣される講師としてだけでなく,講師を派遣する手配師のようなことを行ったり,学校の先生を対象とした法教育の講演を行ったりもしており,相応の負担もかかっておりますが,楽しい体験ができる法教育を広めるために頑張っています。