法律をこえて人生に関わる
野口 沙里 (弁護士)
弁護士登録をしてからあっという間に 1年が経ちました。最近やっと家族から、“弁護士らしくなってきたね”と言われるようになっています。とはいえ、“らしく”ではなく、内外共に成長して“正真正銘の”弁護士にならなければと決意を新たにしているところです。
私が弁護士としての自覚を持つことが出来た理由を一つ挙げるとすれば、依頼者の今後の人生を左右することとなるその重責を、理屈ではなく、日々の体験の中で感じ取っているからだと思います。
人生を左右するというと大袈裟にも聞こえますが、例えば、離婚や親権等が決まることで、依頼人が今後誰と暮らし、どのような生活を営むのかが決定付けられることとなりますし、債務整理がなされれば、生活が一新されてその後の生活状況が一変する場合もあります。
私が最近担当した後見事件について紹介すると、本人の入所施設等の居住場所の選択が問題となりました。
本人の病状や精神状態を考え、ケアマネージャーと相談しながら、入所に適する施設を選択し、病院から施設へと居所を変更しました。このような場合、ケアマネージャー等の専門家と協力し合い、それぞれの強みを活かすことが重要です。また、施設の評判を調査したり、資産状況から費用を検討する必要もあります。病院から施設に入所してしばらく経った頃に、本人に会いに行ったのですが、以前よりも格段に表情が明るくなっていたのが非常に印象的でした。
他にも、勤務先との関係、年金・保険受給手続き、債権債務調査(成年後見人として訴訟を提起することもありました)等々……成年後見人の判断が求められる場面は数え切れません。そして、これらの事柄に一つ一つ対処していく毎に、人一人の人生を背負うということを、再認識するのです。
私は横浜弁護士会の高齢者・障害者の権利に関する委員会に所属していますが、様々な新しい課題の研究もしているその委員会を通し、今後も知見を深めていくつもりです。
そして、任意後見制度も含め、更に増加すると思われる後見制度利用者に対して、画一的に法律を適用するだけでなく、一人一人の従前の生活状況を理解し、意思を汲み上げながら、なおかつ専門的な観点から判断を行っていきたいと思っています。
人の将来に大きく関わっていく責任を胸に、“信頼される”弁護士になれるよう日々努力していきます。