法テラスと民事法律扶助業務について

本田 正男 (弁護士)

 民事法律扶助とは,資力の乏しい方々が法的な紛争に遭遇した場合に,無料で法律相談を行い,さらには,その必要に応じて,法律の専門家を紹介し,裁判の費用や弁護士の費用の立て替えなどを行う制度です。 この民事法律扶助事業は,以前から行われていましたが,昨年10月2日の日本司法支援センター(http://www.houterasu.or.jp/)の業務開始に伴い,同センター(以下では,その愛称に従って「法テラス」といいます。)に業務全体が引き継がれています。

 法テラスは,「あまねく全国において」「法による紛争の解決に必要な情報やサービスを受けられる社会を実現するため」「『総合法律支援法』にもとづいて設立された」組織で,本部の他に都道府県ごとに地方事務所が設置されていますが,殊に神奈川県の場合には,この地方事務所(通称「法テラス神奈川」)に加えて,小田原と川崎に支部が置かれ(川崎支部のことを通称「法テラス川崎」と呼んでいます。 ちなみに,法テラス川崎の電話番号は0503383-5366です。),同一県内に2つの支部が設置されるという全国的にも稀な充実した体制が採られています。

 従来民事法律扶助は,前述のように,弁護士を紹介したり,弁護士費用の立て替えを行うなど,資力の乏しい方々についても,そのことが法的なサービスを受ける上での障害となることがないよう構想されたもので,裁判を受ける権利(憲法32条)を実質的に保障するものとして,それ自体非常に有意義で有難い存在でした。 ただ,困っていたのは,扶助の申込みから決定までに時間がかかるという欠点でした。 従前の扱いでは,扶助の決定に際し,申込者本人の対面による審査が必要で,申込みから決定までに1か月半などということが普通でした。裁判や調停は,月に1回程度の割合で期日が入ることが多いために,たとえば,訴えられたり,調停を申し立てられた方が,裁判所から送られてきた書面を見て扶助を申込もうと思っても,次の期日までに,弁護士による代理援助を受けることができないか,仮に,なんとか扶助の決定には間に合っても,準備のための時間まではとれないということが一般的でした。

 ところが,法テラスになってから, ①川崎でも毎週扶助の審査を行い,また, ②審査に際して,基本的に申込者本人は呼ばない扱いとした結果,長くても1週間,(川崎では水曜日が審査日ですので,)火曜日などに書面を提出すれば1日で審査が下りるようになりました。 余り取り上げられることが少ないように思いますが,この申込み処理の速度の変化は劇的なもので,法的な救済の途が大幅に拡張されたといって差し支えなかろうと思います。