日本を救うロータリークラブの精神

高柳 馨 (弁護士)

 私は,今年の7月から,川崎ロータリークラブの会長を務めさせていただいております。ロータリークラブは,1905年にアメリカ(シカゴ)の弁護士であるポール・ハリスが職業の異なる3名の友人に呼びかけたことから始まりました。ロータリーは輪番の意味ですが,クラブの会合を4名の職場を順番に回って開催したことから名付けられました。現在は,全世界に3万4000クラブ,会員数120万名の大きな組織に発展しました。日本のロータリークラブは,1920年に東京ロータリークラブが設立されたのが始まりで,神奈川県では,横浜ロータリークラブに次いで,川崎ロータリークラブが1951年(昭和26年)5月に設立されました。川崎ロータリークラブは,本年60周年を迎えることになりました。日本のロータリークラブは2309クラブで,会員は約9万名です。

 ロータリークラブは,様々な職業人の集まりであり,会員相互の親睦はもちろんですが,職業を通じて他者に奉仕すること(これを職業奉仕といいます)を目標としていることに特色があります。

 さて,日本は一昨年のリーマンショックを引き金にした不況から未だに脱出できず,私も,弁護士という職業を通じて,地域の不況を身をもって感じております。かつて日本を支配した効率優先,金儲け優先の市場競争原理の考え方により,人々の間の格差は拡大し,社会的弱者の最低限の生きる権利までも奪われかねない状況がまだ続いています。言うまでもなく,人は,効率や金儲けのために生きているのではありません。少し極端なことを言いますと,人は他者に奉仕するために生きており,他者に奉仕することの中にこそ本当の幸せを見いだすことができるのではないかと思います。職業を通じて他者に奉仕するというロータリークラブの精神こそ,現在の日本社会に必要な精神ではないかと訴えたいと思います。