日々是好日(にちにちこれこうじつ)

弁護士 松本 素彦

 毎年、事務所報の題材として、その年に行われた神奈川県弁護士会36 期の同期旅行をネタに原稿を書いてきました。
 しかし、今年は個人的事情のために同期旅行(北海道)には参加できませんでした。

 忘れもしません。令和6 年5 月3 日、ゴールデンウィークの最中、自宅で不自然な姿勢で椅子の上に正座に近い状態で座り込み、スマホに新しいアプリを入れようとして長時間慣れない作業をしていました。足が痺れてきて何とか立ち上がろうとしましたが力が入らず、左足首を捻って倒れ込みました。
 すぐには立ち上がれず暫くして立ち上がったのですが、左足の小指の先から踵部分に痛みが走り、歩くことはできるのですが、片足を引きずる状態となりました。
 ところが連休の最中でもあり病院が開いていません。左足先は膨れ上がり、痛みに堪えながら連休が終わるのを待って、5月7 日にようやく近所の整形外科医に行きました。早速レントゲンを撮ってもらったところ、左足第5 中足骨骨折(左足小指の根元から甲の部分にある小骨の骨折)という診断を受けました。両手松葉杖を貸与され、左足を地に着けてはならないという指導を受け、ほぼ家から出られない不自由な生活となりました。

 その後少しずつ快方に向かい、片手杖の生活を経て、7月に入りようやく全快の状態に辿り着きました。
 こうした事情から6 月に行われた同期旅行に参加できませんでしたが、今振り返ると、何故自宅での普通の生活の中で骨折事故まで起きてしまうのか、不思議でなりません。今までには考えられないことだからです。
 ただ言えることは、若いときと違って骨の組織が相当老化し、骨粗鬆症に近い状態になっていて、骨の代謝バランスが崩れて骨がもろくなり、骨折しやすい状態になっていたからだろうと思います。
 もう前と同じような生活はできないと思い、少し寂しい気持ちになりましたが、まだ歩行はできますし、弁護士の仕事も無理をしなければやっていけます。
 そうであれば、できないことではなく、できることに焦点を合わし、感謝をしながら、大丈夫だと自分に言い聞かせ、一瞬一瞬を大切に生きていこうと思いなおしました。

 好きな言葉に「日々是好日」(にちにちこれこうじつ)という言葉があります。禅問答の書『碧巌録』にある逸話がもとになっているとのことですが、「常に、今この時を、この瞬間を、大切にして、一生懸命に生きて行く、そのように考えて行けば、どのような日であろうと、毎日が良き日であるし、新しい日の連続となっていく」という、極めてポジティブな意味が含まれた素晴らしい内容の言葉だと私なりに理解しております。
 足の骨折も良き経験であり、「日々是好日」の一環でした。良き経験をしました。
今後も「日々是好日」をモットーに新しい年を迎え、今度こそ同期旅行に参加しようと今から楽しみにしております。