弁護士業務妨害について
熊谷 靖夫 (弁護士)
平成22年6月2日,私も所属している横浜弁護士会の会員弁護士が凶刃に倒れました。
本原稿を書いている時点では犯人は不明なため,どのような経緯で命を失うことになったのか判りませんが,報道によりますと同弁護士の弁護士業務に関係する者による犯行の可能性が濃厚なようです。
弁護士の活動は,様々な当事者の間の紛争や権利侵害などを取り扱うため,感謝されることもあれば一方で恨みを抱かれることも少なくありません。弁護士であっても生身の人間であることには変わらず,守るべきものもそれぞれが抱えております。私自身も,相手方当事者から脅迫を受けて身の不安を感じたこともありました。弁護士が,不当な圧力や暴力の前に屈することになれば,依頼者の権利を守ることはもちろん弁護士としての使命である社会正義の実現や基本的人権擁護を守ることはできませんので,弁護士自身が身を守ることを忘れずに活動する必要があります。
横浜弁護士会においては,約20年前に坂本堤弁護士が家族と共に命を奪われたという事件があったことはご存じのことと思います。この事件をきっかけに,横浜弁護士会では弁護士業務妨害対策委員会が設置されました。私も,この委員会の委員として,会員弁護士向け研修の企画や業務妨害に遭われた弁護士の相談に対して助言を行なうなど活動して参りましたが,今回の事件について未然に防ぐことができなかったことが,非常に残念でなりません。
故人のご冥福をお祈りすると共に,もうこれ以上,命を失う弁護士が出ないよう活動して参りたいと思っております。