弁護士2年目の刑事弁護活動

山際 康太郎 (弁護士)

 検察官は逮捕から72時間の間で,被疑者の身体拘束を継続する必要があるか否か考え身体拘束が必要であると判断すると,裁判官に勾留(最長で25日間の身体拘束)を請求します。
 弁護士が逮捕直後のタイミングで刑事弁護の依頼を受けたとき,まず最初に考えるのが勾留を阻止できるかという被疑者の「身体拘束からの解放」の問題です。ここでは,同居の家族や信頼できる職場の上司の方にも必要な協力をお願いします。
 私は,弁護士2年目となる昨年1年間で3件の身体拘束からの解放を実現することができました。その中には,一度なされた勾留の決定を取り消したケースとそもそも勾留をさせなかったケースの両方があります。
 逮捕から72時間=3日間という時間制限がある中での弁護活動になるため,依頼を受けてから夜通しかけての作業となります。そのため,正直体力的に辛いところはありますが,身体を拘束されている被疑者はもちろん,その家族の方々の不安を取り除くためにも頑張りどころであります。そして,この弁護活動の結果,被疑者の身体が解放されたときの達成感は言葉にできないものがあり,被疑者の身体拘束からの解放に向けた弁護活動は弁護士の仕事の醍醐味の一つだと思っています。
 身体拘束からの解放以外にもこんな相談がありました。
 前日に逮捕された外国人のご家族が急遽事務所を訪れました。「警察に連絡したが面会させてもらえない」との相談でした。そこで,弁護士として警察署へ電話をし,弁護士同席の条件で面会を了承するとの回答を警察官から得た上で,そのまま相談者と一緒に警察署へ向かいました。そして,面会の際,立会いの警察官が被疑者に対し,「外国語で会話をしないように」と注意していました。しかし,日本語をうまく話せない被疑者であったためご家族との会話がうまくできていませんでした。そこで,私から会話がかみ合わないから外国語での会話を了承すべきと警察官に指摘するとすんなり認めました。
 この経験を通じて,警察官は弁護士と一般市民とで対応を異にすることをまざまざと感じ,弁護士としてできることはたくさんあることを自覚しました。
 また,昨年8月には日弁連主催の「裁判員裁判法定技術研修」を受けました。朝から晩まで3日間連続で行われる研修で,過去の事件記録を読み冒頭陳述から最終弁論という実際の刑事弁護で行われる法廷弁護活動を実演するという過酷な研修でした。この研修で得られたことは,刑事弁護だけでなく様々な事件に応用できるものでした。3年目となる本年は,研修の経験を生かした弁護活動を実践していきたいと考えております。