年金分割制度の開始について

熊谷 靖夫 (弁護士)

 いよいよ,来春から年金分割制度が始まります。年金分割制度には平成19年4月1日から始まる離婚時の年金分割と平成20年4月1日から始まる被扶養配偶者である期間についての年金分割がありますが,ここでは離婚時の年金分割について説明します。

 離婚時の年金分割制度とは,配偶者が厚生年金・共済年金に加入している場合,婚姻期間中の厚生(共済)年金を納付していた記録を離婚時において当事者間で分割できる制度です。

 分割制度が利用できるのは,平成19年4月1日以降に成立した離婚のみです。従って,たった一日早く平成19年3月31日に離婚が成立した場合には分割請求は認められません。 また,年金の種類によっては分割の対象にならないものもあります。例えば国民年金・国民基礎年金は今回始まる年金分割制度の対象となっていませんので,配偶者が自営業者で厚生年金に加入していない場合は年金分割をすることはできません。

 当事者同士で分割割合(上限は5割とされています)について合意が成立した場合,厚生年金の場合には社会保険事務所に分割請求を行います。なお,分割請求は離婚後2年以内とされていますのでご注意ください。

 ところで,自分たちは年金分割制度が利用できるのか,按分割合の範囲やその内容はどのくらいかなどの具体的情報はお分かりですか? この点,平成18年10月から社会保険事務所・共済組合で情報の提供が始まる予定になっています。

 年金分割制度開始後は,熟年離婚が増えるのではないかという憶測を耳にします。 あなたの配偶者が年金情報を照会したい気持ちにならないように,パートナーとしての自分を見直す必要がないか点検する一つの契機にしてみてはいかがでしょうか。