巻 頭 言

弁護士  菊 池 博 愛

明けましておめでとうございます

 日弁連法務研究財団の活動の一環で昨年9月に約1週間アメリカテキサス州ヒューストン市及びオースティン市に視察旅行に出かけました。写真はその際に見学したテキサス州議会議事堂です。
 研究のテーマは刑事手続における法科学鑑定で,特に証拠の収集・保管,全量消費の問題を扱っております。私はこの中でも特に全量消費の問題に興味を持っています。我が国においても覚せい剤の自己使用事件で尿を任意提出し,その尿から覚せい剤反応が出たということで逮捕起訴されることはよくあります。尿から覚せい剤反応が出たと捜査機関から告げられても被疑者・被告人が自分は覚せい剤を使っていない,再鑑定をしてほしいと主張することもあります。ところが,現在の我が国の実情は裁判で後から尿を再鑑定しようと思ってもその時点で尿は存在しないことがほとんどです。捜査機関が最初の鑑定の時点で尿を全部使い切ってしまう(または残った尿を捨ててしまう)からです。このようなやり方は不平等ではないのか,と考えています。
 今回ヒューストン市の法科学センターを視察し,ヒューストン市では警察が集めた証拠資料を鑑定するのは法科学センターのような第三者機関であるということがわかりました。また,鑑定の際に資料を全部使わないようにスタッフ全員が気をつけていること,やむを得ず全量消費する場合には弁護人に通知し同意を得ることとなっていることなど参考になることをたくさん学びました。
 これから研究をまとめる段階に入りますが,この研究が我が国の刑事司法の改善の一助になればと思います