夫婦別姓に思うこと

若松 みずき (弁護士)

 2009年9月,長年の自民党政権から民主党に政権交代しました。独身女性である私が一番注目しているのは,夫婦別姓制度が実現されるかどうかです。皆さんは,生まれてこの方親しんでいた名字を結婚を機に変えたいですか?

 現在の法制度では、結婚すると夫婦どちらかの姓に変えて同姓にならなくてはなりません。私は、この「しなくてはならない」というのが腑に落ちないと感じています。法律上は夫婦のどちらか一方の姓という決まりではあるものの、女性が姓を変更している率は約96.4%だそうです。この数字は私たちの感覚と相違ないと思います。

 例えば、私が結婚をする場合、相手の男性の両親は、当然私が姓を変えるであろうと期待するので、どちらが姓を変えるのかという話し合いにすらなりません。「私は姓を変えたくないので、どちらが変えるか話し合いたいです」と切り出したときの相手の両親の反応を考えると、切り出す前に怖じ気づく気持ちもあります。なにも親戚づきあいの第1歩から喧嘩を売らなくてもいいのではないか、という気持ちになるのです。特に相手が長男だったりすると「なんだこの嫁は。とんでもない」という意識になることでしょう。先が思いやられます。その意識の下で、我々女性は、意に沿わない名字の変更を強いられているのです。意に沿うならいいのです。同姓が悪いとは言っていません。名字を変えたくない人が変えなければならない、しかも実態としては、100%に近い確率で女性がそれを強いられている、というのが、とても納得がいかないのです。

 もし、選択的夫婦別姓が制度として確立すれば、少なくとも、別姓にするか同姓にするかが話題として挙がりやすくなると思うのです。それだけでも、自分の意思を萎縮させる要素が減るので意義があるのではないかな、と思います。

 夫婦別姓に反対している人たちの間でよく言われるのは、夫婦の名字が違うと家族の一体感が失われる、とか、離婚が増える、ということですよね。しかし、離婚調停や訴訟にかかわっていて思うのですが、彼らが離婚する理由は、お互いのコミュニケーションが不足していたり、思いやりの気持ちが足りなかったり、夫が妻を自分の所有物のように扱ったり、などが多くの原因のように思います。夫婦別姓になると、これらの現象が増えると思いますか。一体感が減って思いやりの気持ちをもてなくなりますか。反対する根拠として成り立っているとはどうしても思えません。むしろ、姓を変えて「家」に入る、という感覚の方が、所有(支配)意識が強まって、他人としての思いやりを忘れがちになるのではないかと思います。別姓にした方がちょうどいい距離感が保てて、かえって離婚が減るなんてこともあるかもしれないですよ。(そもそも離婚て本当に悪いことなんでしょうか・・・実はここも疑問です。)

 世界各国でも、夫婦同姓を強制している国は日本以外には知りません。そのすべての国が日本よりも離婚率が高いとは思えません。

 ちなみに私は、両親が「若松」という姓に合うようにとつけてくれた名と姓とのバランスを大切にしたいと思っています。響きとか画数とか様々なことを考えてつけてくれた名前です。

 同じくらい,将来の夫が自分の名前を大切にしているとしたら,やはり変えることを強制したくありません。早く選択的夫婦別姓にならないかな,と期待してしまいます。