国選シンポ
菊池 博愛 (弁護士)
昨年11月17日ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテルで日弁連主催の国選弁護シンポジウムが開かれました。日弁連の国選弁護シンポジウムが横浜で開催されるのは24年ぶりだそうです。私は日弁連の実行委員として開催の事務方を務めました。
シンポジウムの内容はいろいろとありましたが,黙秘権に焦点をあてた部分がありこれは私にとっては衝撃的でした。
黙秘というと一般的には「何も答えないとは何事だ!」という目で見られがちでどちらかというと否定的な印象をお持ちの方も多いと思います。弁護士の中でも黙秘権行使に疑問を持っている方もいるかもしれません。
しかし,黙秘権は憲法上認められた個人の権利ですし,本来捜査機関は被疑者の自白以外の証拠収集に力を入れるべきです。捜査機関が無理に自白を迫った結果,被疑者が虚偽の自白に追い込まれ,間違った裁判により何年も刑務所に入れらることになったというえん罪が何件も発生しているという歴史を忘れてはなりません。
ただ,黙秘権を行使するといっても弁護人として初めて面会した時点で既にいろいろとしゃべった後であり今から黙秘するのもどうかといったケースもあります。また,早く事実を認めて反省している態度を示すことが重要だといったケースも多数あります。
要するに黙秘権を行使するのはケースバイケースなのですが,思考の過程に必ず黙秘権行使を考慮に入れておくということが重要なのです。
シンポジウムでは黙秘権を行使した結果どうなったかという事例の研究発表もありました。具体的なことは紙面の都合上書けませんが,全般的には黙秘権行使の効果は上がっているという印象でした。
今回のシンポジウムが特に若手弁護士のこれからの弁護活動の参考になれば幸いです。