リーガル・サスペンス

野口 沙理 (弁護士)

 近年,弁護士を題材としたドラマや映画がいくつも放送されています。描かれる内容には現実の弁護士業とかけ離れている部分もあるものの,弁護士に対するマイナスのイメージを払拭し,また,弁護士という職種そのものに興味を持ってもらう意味でも,このようなドラマが増えることはたいへん喜ばしいことと思っています。
 昔から,弁護士を主人公とする映画は数多く制作されていました。「ザ・ファーム/法律事務所」はトム・クルーズ主演のサスペンスで,ご存知の方も多いと思います。有名大学のロースクールを優秀な成績で卒業した主人公が,破格の待遇を提案してきた法律事務所に就職しますが,事務所に隠された裏の顔が徐々に明らかになり,大きな陰謀に飲み込まれていく様が描かれます。中学生のときにはじめて見たときには少し難しく感じましたが,何度も見るうちに主人公の策略の妙や,弁護士の心情の変化に引き込まれ,今ではお気に入りの映画の一つです。
 一人の青年の刑事弁護を引き受けた弁護士を描くのは,リチャード・ギア主演の「真実の行方」です。主人公は野心家で,売名行為のために無償で青年の弁護を引き受けるのですが,終盤の法廷シーンや,弁護士が知ることとなる衝撃的な真実はとても印象的で,今でも鮮明に覚えています。
 男性弁護士を主役とする映画は多いですが,女性弁護士の活躍を描く法廷サスペンスもあります。「ハイ・クライムズ」という映画では,海兵隊時代に一般市民を殺害した容疑で逮捕された夫の無罪を信じ,弁護士である妻が軍事法廷に立つことを決意し,無罪を証明するため奮闘します。軍事裁判に詳しい老弁護士の助けを借りながら,苦難や恐怖,そして孤独の中でも立ち向かっていく女性弁護士の姿はとても凛々しく映りました。弁護士ではないですが,アカデミー賞にもノミネートされた「エリン・ブロコビッチ」という作品では,公害訴訟で大企業の不正を暴いた実在の女性が描かれており,訴訟に挑む女性の強い情熱が伝わってきます。
 他にもおすすめしたい映画はたくさんありますが,どれも,個性豊かな弁護士が,信念をもって法廷で弁を振るうシーンはとても見応えがあります。終盤の大逆転は,まさにリーガル・サスペンスの醍醐味です。少しでも多くの方に興味をもってもらえれば嬉しく思います。
 現実の弁護士業務では,映画のような華々しい訴訟で活躍をすることや,良い結果を得られる事件ばかりではありませんが,それぞれ個性ある弁護士が,依頼者のために奮闘しているという点では変わりがないと思います。私自身,もっと弁護士を身近に感じ気軽に頼ってもらえるように,依頼者に寄り添う弁護士を目指していきます。