オーバーアマガウのキリスト受難劇

菊池 博愛 (弁護士)

 オーバーアマガウはドイツ南部バイエルン州にある小さな村で10年に一度村人が総出で行うキリストの受難劇(キリストが十字架刑に処せられる過程を劇にしたもの)で有名なところです。
 ヨーロッパでペストが大流行していた17世紀前半にオーバーアマガウの村人が神に祈りを捧げ「もし祈りが聞き届けられペストが終息したならば感謝のしるしとして10年に一度キリストの受難劇を上演する」という誓いを立てました。その祈りの後ペストが終息したということでこれをきっかけに1634年から370年以上もの間オー バーアマガウでは10年に1度受難劇が上演され続けています。
 1回の上演が朝から休憩をはさみながら夕方までかかるそうですが、上演の年は5月から9月まで100回以上も上演されるということで大変大きな規模であることがうかがえます。2,000人以上の村人が出演し、中には勤務先から1年ほど休暇を取得して故郷のオーバーアマガウに戻って出演する人もいるほどです(なお、勤務先でもオーバーアマガウの出身だということを説明すると理解が得られるようです)。
 前回上演されたのが2010年であり2020年は上演年のはずでした。ところが、2020年は新型コロナウィルス蔓延というペストの流行に勝るとも劣らない歴史に残る年となり、さすがのオーバーアマガウの受難劇の上演も2022年に延期になったとのことです。

 感染症であるペストの収束をきっかけに始まったオーバーアマガウの受難劇が同じく感染症である新型コロナウィルスの蔓延が原因で延期されるという出来事に何かを感じずにはいられません。
 2022年までに新型コロナウィルスが収束し、外国との往来も自由にできるようになっていれば是非オーバーアマガウのキリスト受難劇を鑑賞してみたいと考えております。