ふるさとは…

米積 直樹 (弁護士)

 当事務所のHPの自己紹介でも触れていますが、私は鹿児島県出身です。そして、生まれ育ったのは信号機もなく、家には鍵もかからない(鍵を掛ける必要のない)まさに田舎でした。

 大学進学を機に上京してからは、1年に1度くらいのペースで帰省していましたが、「恋しい」というような感情を抱くことはあまりありませんでした。それどころか、もう少し若い頃は、田舎ならでは人の距離感の近さに、息苦しさのようなものを感じていたように思います。

 そんな私も、年齢を重ね、結婚し、子を持つという経験をする中で、新しい家族に、自分が生まれ育った場所を好きになって欲しいと自然に思うようになりました。どこか故郷に冷めた目線を向けているように感じていた自分が、そのような心境になったことは嬉しい驚きでした。現在は1年に2回は帰省するようにしており、その都度家族で観光地を訪れています。私自身意外に地元の観光地に行ったことがなく、色々な場所を訪れては、故郷のよさを再発見しています。田舎特有の人の距離感の近さも、今では心地よく感じるようになりました。やはり「ふるさとは遠きにありて思ふもの」です。

 ちょっと違いますかね。

 鹿児島県出身の方はみなそうだと思うのですが、なかでも桜島への思い入れは特別なものがあります。世界有数の活火山としても有名な桜島ですが、鹿児島市内には爆発のたびに火山灰が降り積もります。それでも降灰も生活の一部として受け入れたうえで、畏敬の念を胸に毎日仰ぎ見ているのです。

 桜島といえばその勇壮な姿が印象的ですが、私が一番お勧めするのは、もとは島津家の別荘である仙巌園(通称磯庭園)からの眺めです。晴れた日であれば、桜島のゴツゴツとした山肌が青みがかり、鹿児島湾の海の光の輝き(錦江湾とはよくいったものです。)が相俟って、非常に美しいです。私が故郷のことを思い出すときにまず浮かぶのはこの景色であり、ぜひ多くの方に見て頂きたいと願う風景でもあります。