2025年を迎えて

弁護士 菊池 博愛

 今年は西暦では2025 年になりますが、昭和100 年にあたる年ということだそうです。
 そこで、今からちょうど100 年前の1925 年にどのような出来事があったのかを調べてみました。 

 そうしたところ、1 月にイタリアのムッソリーニが独裁宣言。4 月、日本において治安維持法公布、ドイツではヒンデンブルクが大統領選挙に当選。7 月、ヒトラーによる「我が闘争第1 巻」公表といった出来事があったことがわかりました。これらの出来事を見ると100 年前がどのような時代であったのかある程度想像ができます。
 この14 年後の1939 年にドイツがポーランドに侵攻して第二次世界大戦が始まり、日本もドイツ、イタリアと同盟を結んで戦争に突入していくこととなります。

 さて、この100 年間で人類はどれだけ進歩したでしょうか。確かに、科学技術の進歩は目覚ましく、医療の分野では再生医療の実用化が目前と言われ、宇宙開発技術の分野では民間人の宇宙旅行も夢ではない時代となりました。
 また、情報技術の分野においても進歩は凄まじく、犯罪や災害など様々なニュースについて一般人がリアルタイムでスマートフォンを使用して全世界に向けて中継することができるような時代となっています。
 しかしながら、情報技術については進歩した反面、情報発信の際の匿名化が進んでしまい、無責任な言論が多くなったように感じます。例えば、芸能人やスポーツ選手の多くがSNS を利用していると思いますが、有名人の発信に対してアンチと呼ばれる人々が行き過ぎたアンチコメントを行い、これを読んだ発信者の方が心を病んでしまうこともあるようです。
 また、インターネットを利用していわゆる闇バイトを募集し、初めて顔を合わせた者同士で押し入り強盗に入るような事例が多発しているというニュースもありました。この場合、捕まるのはほとんどが実行役であり、指示役などの上位者は名前を出さずに行動していることなどから捕まることはほぼありません。
 この100 年の間、人類は確かに科学技術の面では進歩しました。しかし、人の心は冷たくなってしまったように感じます。

 さて、新しい年を迎えましたが、世界を見渡すと紛争があり、災害があり、一歩間違えれば世界が終わってしまうのではないかと思われるほどの混沌とした状況にあります。
 しかし、人の心が温かくなって、助け合いながら困難を乗り越えていくことのできる世界になっていくことを願っています。