久しぶりの再会

弁護士 小川 健一

 私が所属する神奈川県弁護士会の野球部では、年に何回か他県に遠征に行きますが、昨年は札幌へ遠征に行きました。

 実は、札幌の野球部に後輩が入部したという情報を仕入れていました。
 他県の弁護士会チームの選手名簿というものを毎年見ることができるのですが、たまたま札幌野球部の選手名簿を見ていたところ知った名前があり、気付いたものです。
 私が講師、後輩が司法試験受験生という立場で知り合った後輩です。普通、学生が講師の人を覚えていても、講師が学生を覚えている、というのは少ないと思いますが、彼は印象に残る学生だったので覚えていました。
 そして当日、後輩と久しぶりの再会を楽しみに札幌へ行きました。後輩は投手なので、「もしかしたら対戦することがあるかもな。先輩として打ち取られるわけにはいかないな」など楽しみにしてきたのを覚えています。

 試合が始まると、彼はリリーフとして私の次の打者から登板しました。そして、ちょうど次の私の打席のときに交代したので、私だけが彼と対戦できないというミラクルが起こってしまいました。
 それでも、一塁に出塁していた私に執拗に牽制球を投げてきたので、だいぶ私のことを意識しているように見えました。
 内心、「先輩にこんなに牽制してくるなんて、なんて後輩だ!」など考えていました。
 その後、私は後輩にかっこいい姿を見せようと気合が入っていたおかげか、ホームランと二塁打を打つなどし、チームのサヨナラ勝利に貢献しました。
 後輩の前でかっこいい姿を見せることができたことに、内心ホッとしたのを覚えています。

 試合終了時の整列では後輩の目の前だったので、「久しぶり」と言う感じで、なんとなく目くばせをしました。
 そして試合後、グラウンド整備をしている後輩に声をかけに行きました。
 私が「久しぶり」と声をかけると、後輩は驚いたような表情で振り返り、私の顔を見て少し黙ったあと、「…えっと、どこかでお会いしましたっけ…」。なんと、私のことを微塵も覚えていなかったのです。
 私は、とても恥ずかしくなりました。整列のときに目くばせをしたのを彼はどう思ってたんだろう、ちょうど私だけ彼と対戦できなかったことを彼は特に何も思ってなかったのか、私がホームランを打った姿を見てもただの一選手がホームラン打ってるなくらいにしか見てなかったのか、ただの一選手に何であんなに牽制してきてたのか、など色々な記憶がフラッシュバックしてきて、一方的に後輩を意識していたことが恥ずかしくなりました。

 そんなこんなで、楽しい札幌遠征となりました。
 久しぶりの再会というのは、いいものです。
 皆様も久しぶりの楽しい再会があるような1年となることを願っています。